文庫本が出たのは知っていたのだけれども、6冊もあるためなかなか気合をいれないと読み切れない。先週の水曜日から帰宅するごとに1日1冊ずつ読み進めていて、残りを土日で読み終えた。
読後は1つ別の世界をぐるっと回ってきたような気持ちになる。小説を読むと描かれている光景が目に浮かんで、自分の思うままに映像をつくるようにして味わう。この1Q84は美麗でもなければファンタジーでもない、比較的に日常の風景を切り取っている。そう思って読んでいるとやはり気がつけば知らないところに運ばれていた、という独特の感覚を覚えた。村上春樹さんの他の作品もいくつか読んでいるが、この作品は比較的読みやすかった。どこの書き方がどう違うかと言われると説明が難しいのだけれど。
青豆と天吾という2人が20年越しにどのように会うのかという枠組みで全てが進むのかと思いきや、小説が綴る文章が世界をつくっていって不思議な引力を働かせる。ああそして私もまたこうして紙の小説を読んでまた違う世界に運ばれているのだと思わせられる。箱の中にある箱をみて愉しんでいたら、自分も箱の中にいたのだと気がつくようなものだ。マトリョーシカの2段目の人形も同じ気持ちなのかもしれない。
この1Q84では、普段わたしの通る道が登場する。それもまたこの小説を読みながら不思議な思いにさせられる一因でもあった。