昨年末にサントリーホールブルーローズでの演奏を聴いていて、せっかくだし普段のバンド編成での演奏を聴いてみたいなあと思い新宿ピットインに行ってみた。初ピットイン。予約をして行ったのだけど普段のコンサートホールと違って、一人一人名前を呼ばれて入場するのが新鮮。病院の受付か、いや、何か闘技場に入っていくような感じか。直前に予約をしたので立ち見になってしまったのだけど、私の後からもどんどん人が入ってきていて結果的に会場のお客さん半分くらい立ち見だったんじゃないだろうか。大盛況である。
音を聴いてまず思うのが、前回ブルーローズで聴いた時と比べて音の輪郭が全然違うこと。エレキベースの音がしっかり音色を持って聞こえる。ホールで聴くのも好きだけど、こっちの方が、というかピットインのこの会場がすごく近いので良い。ドラム・ピアノ・ベースの音のバランスも心地よくて、生で聴くのに気持ち良い。普段ジャズはCDでしか聴けていないのでもっとちゃんと会場に足を運ぼうと反省した。
曲の始まりからガツンと殴られるように展開してくる。おお、ドラムが入るとこんなに違うのかと驚く。ドラムは号令のようなものなのかもしれない。会場の温度感をどんどん上げていって、場所を作ってしまう。そう思えばピアノがそのリズムに答えつつ遊びまわって、音程をつけてリズムを少し変えて展開していく。いろんなCDを聞くと思うのは、ai kuwabara trio projectで面白いのはエレキベースの使い方じゃないかなぁと感じる。あんなに旋律的に、音場を作るためにエレキベースを使えるものなのだなぁと思う。僕がクラシックギター弾きだからそう感じるのかもしれないけど、エレキベースというのはまだまだいろんな可能性があるのだろうなあと思う。今日も、いわゆるE-Bowのような音の出し方をしたりという、なんだろう、バラードの曲の時に擦弦的な音の出し方をするようなことをしていたり。これも掛け合わせあってのことなんだけども、ああ効果的だなぁと思いなあがら聴いていた。
途中でHandsという曲があって、これは今日の新曲とのことだった。きっとどのあたりがうまくいったか?と出演者の皆さんに聞けばいろんな話が聞けて面白いのだろうなぁと思うけども、個人的にはこの曲のフリーな部分が面白かった。いい意味で一番予想できなかったのである。ウッドベースはずっと規則的にリズムを刻んでいくのだけども、ドラムとピアノが全然違う拍子を取りながら(もしかしたらそう聞こえるだけなのかも?でも少なくとも違う拍子感を取っているように聞こえた)、でもお互いに作用しながらずっと曲が進んでいくのである。本当にジャズは耳で弾けるのだなあと見ていて思うのだった。