2013年12月8日に行われたリベルテマンドリンオーケストラ第10回演奏会の動画をYouTubeにて公開しました。是非御覧ください。公開の準備のできたものから随時アップデートしていきます。
ヴィヴァルディ協奏曲集「四季」より夏
四季より夏です。夏は乾いた音の表現をかなり意図的に行っています。砂漠の苛酷さから砂嵐が吹き荒ぶる凄まじさまで、そういったイメージで演奏をしました。四季全体を通してギターパートは通奏低音を担当していますが、僕のパートはギターパートの中でも比較的自由な音使いになっています。コードのみ決まっていて、あとは自由に弾いているという具合です。第3楽章のPrestoはとにかく速かったです。本番は勢い良く、オケ全体がぐっと集中力を増して吹き荒れていきました。
ヴィヴァルディ 協奏曲集「四季」より冬
冬は凍てつく寒さの表現から始まります。足音なのか、はたまた氷が少しずつ固まっていく時に出るカチカチという音なのか、とにかく寒そうな音を想像して弾きました。僕は冒頭から、他のメンバーがSul ponticello(弦をコマよりで弾いて硬い音を出すこと)をしているなか、一人で柔らかい和音を小さく、暖かく響かせています。これは和声的な展開のスパイスでもありますが、人が何か寒いところでも、その心の暖かさを保ち、着々と何かが芽生えていくような様子を表しているようにも感じました。冬の豊かさのようなものなのかもしれません。
壺井一歩 マンドリンの為のソネット 第6番(委嘱初演)
第10回演奏会でも壺井一歩先生に曲を書いていただきました。昨年の第5番でも現れていたように、非常に旋律的でデリケートな展開が繰り広げられます。ギターパートには冒頭から曲を象徴付ける極小のアルペジオから空間をつくっていくことが求められていました。ヘミオラのリズムで続けられるアルペジオからは浮遊感が出やすくなりますが、演奏者としては拍感はもとより和声感を大切に保つ必要がありました。今回は望月さんのソロに寄り添って伴奏をする場面も多々有り、特に呼吸について再考をしました。例えば2拍3連のリズムが絡むフレージングでは意図的に頭を深くするようにしています。また、ギターのソロとなるアルペジオの部分では、フレーズと和声がアルペジオの中で混在している、夢見るような響きと浮遊する様を表現するような箇所が第1楽章で出てきます。望月さんのソロは長音で推移していきながら、浮遊感と副旋律を醸しだすのです。ここはまるで宇宙旅行に味付けをしているような気分になりました。とても好きな部分でした。
権代敦彦 ふるへ/をののき 〜quake〜 op.140(委嘱初演)
第10回演奏会の終曲となったのは、権代先生の委嘱作品でした。細かいことは触れずにとにかく演奏を見ていただきたいです…。でも会場でしかあの空気感は感じられないと思います。「曲には曲の聴かれるべき場所がある」と去年の夏に言われたのを思い出さずに入られません。極度の集中力を求められました。ひとつ言えるのは、今回この曲の演奏を通じて一つ、何か僕の中での演奏のスタイルや取り組み方というのが変わりました。真摯に曲と向き合って、自分から何かを出力して伝えるということに貪欲になったのだと感じます。
今回の演奏会は本当に「挑戦」という言葉がこれ以上似合うものはないだろうというほど、個人的にも団体としても挑戦が数多く有りました。本当に盛大な本番となりました。
今回の演奏会、うまく言えませんが、なんだろう。ちょっとこう、普段意識している事柄、「ああもっとこういう場面はこうしたらいいのに!」とか、「ああこういうことが僕はもっとしたいんだ!」とか、「ああそうじゃなくて僕っていう人間はこうしたいんだ!」みたいな感情の強さみたいなもの、誰もが持っていながらうまく外に出せないもの、そういうものを如何に表に出すかというのが個人的な目標であり課題でした。そう、権代先生の曲では本当にそれが演奏に顕著に影響しました。合奏って難しいものですが、合奏だからできることもあります。僕が、呼吸とか、身体とか、感じているものとか、そういう震えを、ぐっと、ホール全体を飲み込むくらいに出して、オケを巻き込もうという試みでした。うまくいったかな。でもいろんな人に聴いてみたら、何かこううまく言葉に表せないようなものが、残せたみたいでした。これはとても嬉しかったです。こう、なかなか生きてるって言うことは表現しづらいのですが、生きている人間の葛藤と、震えるということ、それを他の人に伝えるという手段として、音楽というのは本当に僕にとって大切な方法だと思いました。自分が存在しているって伝えるのって、いまこの瞬間にしかいないんだけど、そのときにもってるエネルギーとか熱量みたいなものを、存在として伝えるっていうことが、すごく楽しいですし、伝わればいいなとか、そういうことを思いながら弾きました。
動画でも演奏を楽しんでいただければ幸いです。そして是非来年、会場でひとりでも多くの方に聴いてもらえることを願っております。