2019/04/27

さよならファーストプレイス

灯を消したその瞬間に、初めてその場所の大切さを知る。

なぜか人が集まってしまう社内バーAJITOは本当に愛されている場所だった。18時半になると少しずつ人が集まってきて今日の仕事やら世相や流行りのゲームについてなんやかんや話をし、楽器をいじり始め、パソコンいじりをし、酒を飲む。今日もまさにそんな一日だった。引っ越しの荷造りを終えて、どの座席におくるのかをシールで貼り、いらないものをひたすらに捨てた。

今日はファーストプレイスでの最終日だった。オフィスがゴールデンウィーク明けから移転するためだ。ファーストプレイスは自分が社会人としてはじめて働き始めたオフィスだ。いろんな人と出会い、仕事をし、考え、議論し、多くの時間を過ごした。

最終日だとわかっていてもなぜか実感がわかない。しかし今日は変だった。夜中に人が増えてきて、そういえばAJITOに飾ってあるトロフィーなんかを梱包しないとねと作業を始め、もう終わる平成の懐メロをiPadが流し続け、倉庫の奥にあった賞味期限切れの非常食にお湯を注いで食べた。246の上を走る首都高速をみると、10連休に差し掛かる金曜日の夜らしい渋滞をしていた。電子ドラムはしまってしまったがフレームドラムとカホンを出して、あるいは梱包したはずのギターを取り出して、適当な歌を弾いた。

最終日だからと冷やしたビールがまだ冷蔵庫に20本ほどあったのでみんなで飲んだ。日本酒が余っていてそれも飲んだ。赤ワインのスパークリングもあった。コップはしまってあったので、オレンジ色のファンタの紙コップでスパークリングワインを飲んだ。水はもうなかった。

そしていろんな話をした。今の事業のこと。スキーのこと。10連休にSEKIROをなんとかクリアしようということ。これからの将来のこと。

ふとAJITOの船のオブジェを眺める。なんでこんな大きなものがオフィスのフロアにあるんだろうねとつぶやく。当時一番奇抜なデザインだったものを選んだんだよという。一応分解できるつくりになっているのだが、もう船は処分される。エレベーターを出て、船がある。そういう光景はもう無くなる。変な会社の光景はなくなってしまう。

なんであんなデザインだったんだろうねと誰もがいい、そしてここが良かったという。よくわからないけど集まってしまう場所があり、なぜか自然に話を始めてしまう。そういう場所がファーストプレイスのAJITOだった。僕もここでたくさんエンジニアリングの話をして、SICPの感想会をやって、ときどき取り組んでいる問題について議論して、ギターを弾いたりした。当時もきっと多くの技術的な話をAJITOでしていた。

場所が文化をつくる。場所に人がいて、集まって、文化ができる。気がつけば文化を作ってきた。次の新しいオフィスでは文化を持って、場所を作ろうと思う。次は場所を作る側だ。そうやって人は何かを良くしていく。

さよならファーストプレイス。