昨年、「Engineers in VOYAGE」がラムダノートさんから出版されました。名前の通り、VOYAGE GROUPのエンジニアリングについて書かれた本になっています。
Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち
最初この本の企画についてCTOの小賀さんから「和田さんがVOYAGE GROUPのエンジニアにインタビューしてそれをまとめたら面白そうじゃない?」と相談されたのを覚えています。たしか2019年の秋頃。面白そうだけどどう形にするのだろうと思っていたら、あれよという間にラムダノートさんが携わっていただけることになり、おおこれはちゃんとした本になっていくのだなと思いはじめたのが2019年末。そこから章立てなどの本の構成を決め、さてインタビューをしていくか・・となった頃、COVID-19が日本でも感染者がちらほら出始めつつあったのでした。
自分とajiyoshiさんがインタビューを受けたのが2020年1月。初回のインタビューだったのでどうやっていくかというのも探り探りではありましたが、もうここ5,6年ほど和田さんにはコーチについていただけているのもあり、リラックスしてお話しました。それこそポッドキャストの収録のように、一応事前にどんな項目を話そうかというのをGoogle Docsに箇条書きにしていました。リアーキテクチャや技術的に面白い話になるとやはり多めに話してみたり、あるいは事業的になぜそういう判断ができたのかということについて深堀りしていただいたり。開発を加速するためのデプロイ、アーキテクチャ変遷、組織とコードの関連、負債の返却、故障からの復旧を速くするための工夫、フットワークの軽さ、採用に関する考えなどから意思決定の有り様について振り返る時間となりました。
この本が生まれたのは、和田さん、そしてラムダノートの鹿野さんのことばを引き出す力があってこそです。私達は普段「いい感じに」といって細かく言語化せずにチーム内でのやりとりをしてしまいがちです。そしてなぜこれがうまくいっているのかについてもまた、うまく言語化できていませんでした。事業部ごとのインタビュー集といった体裁で話し言葉で語られていきますが、僕たちの生の言葉と、読者のみなさまとをつなぐ抽象をお二人が作ってくれたからこそ、こうして多くの方々に共感や発見をしていただけるようになったのかなと思っています。どうもありがとうございます。
和田さんの昨日のDevelopers Summit 2021 「ITエンジニア本大賞 2021」プレゼン大会の資料にもあるように、この本はとても生々しいです。僕らは実践を通し、日々学び、リスクを選択しながら意思決定を重ねています。あらゆる開発に適用できるメソッドが書かれているわけでもないし、きれいな成功例が書かれているわけでもありません。日々どのような枠組みの問題をどのように解決し、技術者の集団としての振る舞いがどう形成されてきたか。そうした観点から僕らの日々の仕事がこうして紡がれたことを嬉しく思っています。初めてできあがった本を読んでみたときは、中の僕らでも気づかなかった他の事業部の工夫やエピソード、あるいは同僚の審美眼やオーナシップを改めて知り、感心したのでした。また、なぜこうした事業部が独立して生まれてくるのか、そうしたことを中にいながら考える時間にもなりました。
事業をやっているとなかなか思うように策がはまらないことばかりです。うまくいくことはリスクのとり方が小さすぎることが多いです。それはうまくいっているようでうまくいっておらず、事業的に小さな改善にしかなっていないこともしばしばあります。しかしこれをエンジニアリングと重ね合わせると、成果を早く多く出すためのエンジンを改良するための投資がうまくできるようになり、投資機会が連続して作り出せます。この本にはそうしたVOYAGE GROUPの競争力の源泉の1つを生み出す、エンジニアリングの生の現場が詰まっています。
日々まだまだ迷うことも多くありますが、これを励みに引き続き事業に悩んでいきたいと思います。ぜひ読んでみてください。