2013/07/16

深く集中して模索しているときじゃないと、出てこないものもある

実は3回目のニューハイツ

3連休は合宿に行ってきました。新宿から高速バスで、一路河口湖へ。東京よりは少し湿度が低く、さらっとした空気でした。ギターを抱えて河口湖に行くのは大学の時以来です。2泊3日で泊まりに行くというのも久々で、日中は合奏をし、夜は音楽の話をしながらお酒を飲みました。普段はなかなかまとまった時間がとれず、団員と話し時間もろくにとれてなかったので、とてもよい機会となりました。やはり合宿は良いものです。

初日の練習はあまり音が鳴らず、少し不安になりました。指揮の碇山さんと「移動日だからみんな疲れているのかもしれないですね」という話をしつつ、シェヘラザードを弾きました。前の練習から時間が空いてしまうと、なかなか音楽に慣れていくのに時間がかかるものなのかもしれません。僕も先月仕事でパツパツだったこともあり、久々の合奏となりました。

2日目からは作曲家の桑原ゆうさんにも指導していただきました。今回委嘱させていただいた「みずかげ3章」の練習のためです。練習の中では曲の中の素材を、アンサンブルで実際に音を鳴らしながら確かめていきました。水の落ちる音や、曲の中に脈々と流れるものを1つ1つ確認していくことは、改めて曲について考えるよい時間となりました。音程ではなく、響きのイメージが先にあるということは演奏者にとっては弾くことのパラダイムを変えなければなりません。

ギターもマンドリンも撥弦楽器ですから、音の出るタイミングは指やピックから弦をリリースするときに決まります。それに加えて弦に指をセットするときの深さや角度、指の触れ方との関係で出てくる音が変わります。これを意識しないと、あまりに音が軽くなってしまったり、意識の浅い音になってしまいます。曲の中で繊細な音階を弾くときにはこれを特に大切にしなければなりません。マンドリンは特に、弦を叩くように弾くのではなく、置くように弾くことが求められます。慣習のなかにない気づきのある、良い練習となりました。

練習後の夜の懇親会でも普段聴けない話を色々と聴くことができました。はっとしたのは、桑原さんの仰っていた「消費される音楽は違うと思う」ということです。普段だらだらとイヤホンから音楽を聴くということで、僕は音楽を消費してしまっていたのだなと思ったのです。今までそういう感覚になったことはなかったし、新鮮でした。音楽を聴くというのはそれだけで大変なことです。目に見えないものを想像して、どういう構造なのか、どういう意図で作られているのかを考えながら、感じながら聴かなければなりません。

毎年嬉しいことに委嘱作品に触れる機会があり、こうして実際に話ができるということを嬉しく思います。クラシックの演奏会の場合、もう既に話すことの出来ない作曲家の方の曲を取り上げる機会が多いものです。曲を作った経緯やイメージ・音楽に向かう姿勢などなどを聞くことができるだけで、演奏する際に楽譜の先にある何かを考えずにはいられなくなります。深い集中の中から曲が生まれてきた過程を、追体験するように演奏しなければなりません。これは今の音楽を作っていくことの、一つの醍醐味なのだと思います。

本番は8月11日です。場所はティアラこうとう大ホール、開演は14:30です。

http://espritmo.web.fc2.com/index.html

2013/07/02

学びの多かった6月の振り返り

All melody is expression of grief. by Kenta Suzuki (KentaSuzuki)) on 500px.com

忙しい時には学びが多いものです。しかし、忙しい時にはなかなか振り返る時間が持てないものです。一山超えて一息ついているこのタイミングにしっかりと振り返りをしてみます。

6月はとても学びの多い月となりました。タスクとしては、大きく1つ、DMPのリリースを担当することでした。これは内部的プロダクトではありますが、既存のDMPに手を入れつつ、ユーザ分析基盤を新しく設計し、実装し、カットオーバーする機会を得ました。

僕は惰性なエンジニアですから、普段の仕事というのは極力面倒なことを少なくする方向に常に意識が向いています。ですが、時間に余裕がなくなるとどんどん仕事の質が落ちていって、ひどく将来性のないコードをたくさん書いてしまいました。余裕がなくなると、勉強の時間も削られていって、コードの質が上がらない時間を過ごしてしまうことになりました。これは負のスパイラルで、「こういうパラダイムがあるとわかっているのに、そこに触る時間もなく目の前のものをなんとかするしか無い」という判断を積み重ねていくと、その先にはあまり良くないコードや設計が残ってしまいそうになります。本当にプロダクト開発というのはなまものなのだなと思うのです。

4-6月で進めていたプロジェクトでした。4,5月のマイルストーンを着々とこなし、余裕のあるペースで進めることができていました。しかし、6月の中盤以降は毎日ひどく遅くまで残らざるを得ない状況となってしまいました。最も酷かった日は午前9時半に出社して、一歩もオフィスから出ずに、誰とも会話をほとんど交わすこともなく、午前2時までコードを書いていました。出演する予定だった演奏会もキャンセルして、ひたすら設計してはコードを書いていました。こうなってしまった理由はシンプルで、4,5月に「作るべきもの」として認識していたものと、6月中盤に「作るべきもの」であったものが、量・質ともに乖離があったからです。これはもう、社内の当事者間でのコミュニケーション不足としか言えませんでした。僕として出すべき情報を先方にも出せていなかったですし、先方の希望をしっかりと聞くこともできませんでした。「ひとまずこれくらいのものを作っておけばよいのだろう」と考えていた甘えが僕に有りました。しかし、実際はそうではなかったのです。

6月中盤以降、実際に先方の要求を把握し、さあ全くもって要件を満たせていないということを知ってからは戦争のような毎日でした。集中をなんとか持続し続けて、長い長い2週間を、多少無理しながら終えました。機能を追加・拡充し、インフラを整備し、ミドルウェアを調整し、デプロイし続けました。これ自体やっていることはいつもと変わらないことですが、驚くほど短期間でやらなければならなくなってしまいました。

そういうプロジェクト佳境では、多くの同僚に助けてもらいました。インフラのメンバーには無理を言ってかなり優先して、スピーディーに環境を作ってもらいました。また、同じくリリースを控えていて、僕よりミッションクリティカルなシステムのローンチを控えているチームのメンバーに負荷テストや設計を手伝ってもらいました。運用ポリシーで悩んだ時には社内の専門チームにすぐに相談して、設計方針をブラッシュアップすることが出来ました。もういろんな人にお世話になり、迷惑をかけてしまった2週間となりました。入社以来最も過酷で、最も色々な人に迷惑をかけ、そして感謝をする2週間となりました。僕がもっとこういう設計をできていたなら、もっとプロダクトを取り巻く環境について知っていたなら、もっと事前にいろんなメンバーを巻き込んで早め早めに進めることができていたなら…。そう思わずにいられませんでした。

最終的には機能要件を満たし、なんとかリリースすることが出来ました。まだまだ求められているものには程遠く、やっとスタートできたというところではあります。何より、DMPというプロダクトの性質上、徐々に効率を高め、成果を上げて行かなければならないのです。やっと正常にサイクルを回せる環境が整っただけなのです。こうして少し落ち着きを取り戻しつつある今、自分が2,3週間前にできていれば超えられていたであろうところを学ぶ時間を得ることが出来ました。

そんな6月でした。