2020/12/24

2020年を振り返る

今年はコロナの年だった。遠くに行くこともなく、ほとんど家で仕事をし、たまに天気のいい日だけ渋谷のオフィスに立ち寄った。新しい人と会う機会がぐっと減り、とはいえ旧交を温めるでもない。普段からWebの世界で仕事をしているので影響が少ないだろうと考えていたが、意外な出会いや発見、予期しない問題とそれによる面白さが減ってしまった年でもあった。

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仕事について。今年の前半は2月20日ごろから在宅で働き始めた。もともとチームでもGitHub, Slack, Backlogを使ったツールを使ったやりとりが中心であり、開発はほぼスムーズに進んだ。社内の情シスでもVPN関連の使い勝手改善をしてくれ、春頃には随分快適になった。自宅へのディスプレイ手配や作業用PC環境などもすぐに揃い、総務や情シスの皆様に感謝しつつ仕事が回り始めたのが2月3月であった。開発自体も大きめの機能開発がいくつか走っていた。今年一年は今までで最も機能のアップデートが多い一年だった。オフィスへの移動、余分な会議が減ったことにより、長く開発に集中できる時間が増え、設計や開発、テストにかける時間が十分に取れたのは今年の収穫だった。

ただし別の課題があった。個々のパフォーマンスのブレが大きくなった。オフィスで働いていたときにも集中してプロダクトコードへコミットを続けていたエンジニアはより多くリリースをした。しかし、オフィスでのなめらかなリマインドと軌道修正がやりづらくなったことによる影響の多いエンジニアはアウトプットが出づらくなった。これまでチームとしてはオフィスに頼っていて、そこら中にあるホワイトボード、あるいは座席でのちょっとした会話(これは特に営業・コンサルタント・オペレーションなど様々な役割の同僚とのちょっとした会話であり、まだ問題が定まっていないものや、あるいはリマインドも含まれる)によって成り立っている部分が多々あった。これが在宅勤務により顕になった。

より大きな課題は半年ほど経つと見られた。会社やプロダクトとしての推進力がより一層偏ることだ。プロダクト戦略・そして会社としての方針、マーケットの状況、そして最も大事な顧客の課題。オフィスでさえうまく拾えていないものは、オフィスにいなければさらに拾いづらくなった。物理的な場所にいれば大きな受注があればざわつきで察するし、何があったのかすぐに聴ける。いまでもSlack、Google Docs、Kibelaなど、社内で情報を共有することはしているが、見られない。見られなくなってしまっていた、悲しいほど。かなりコアなプロダクトを開発していて、顧客ペインを解消し、価値を生み出していたメンバーでも、全体としての会社方針への関心がどんどん薄れてしまっていた。最大の危機感であった。

こうした状況をうけて、まず自分の言葉で丁寧にそれぞれの施策、これらに結びついた背景を、さらに噛み砕いて文章として伝えることに多くの時間を割いた。これらはもう説明しているし、すべてのメンバーに自明だと思いこんでいた。でもそうではなかった。なぜこれらの機能が作られたのか、それはそもそも現状のアーキテクチャがこうで、顧客のペインがここにあり、競合がこうしていて、事業構造がこうなっている。であるから、収益構造上ここはまだアプローチの余地があり、そのためにこのプロダクトアーキテクチャを変えて、変化をさせやすくしつつ、新しい機能を盛り込む。ハックの余地が生まれていないならまずは数字をとって計測可能にしつつ、継続してみてもらう(オブザーバビリティを設計する)。個々の部分はそれぞれ実行してくれているメンバーがいるが、すべての会社の取り組みについてこれらを言語化することは誰もできなかった。あるいは書いた文章にだれもたどり着けなかった。自らを中のひとに説明できずにいて、どうして顧客にそれを説明できようか?そしてどうしてよいソフトウェアがつくれようか?なぜ理解できないものに面白さが生まれようか?こうした当たり前の課題をコロナは叩きつけてくれた。今年は自分で開発する時間よりも、要望を拾い、プロダクトとして何が実現されればこれを効果的かつ発展的解消でき、投資に見合うか、ということをひたすらにやっていた。考える力のないチームが伸びるはずがない。今年の仕込みが、来年以降の成果に結びついてくれることを願うばかりである。

私達はツールを使っていれば物事がうまくいくと考えすぎだった。日々のつぶやきをすべて見るほどみんな暇ではない。一度のアナウンスですべてが理解されるわけではない。繰り返し繰り返し伝え、わかりやすく噛み砕き、理由を理解し、自発的な行動が伴う(これは火が付くようなこと)状態までチームが変わるようにしなければ何もかわらない。そして何度説明しても全部理解されることはないが、少人数のチームであれば理解度を徐々に醸成できる。オフィスに頼っていたのではなく、ただ伝えることを怠けていた。理解が伴えば新たな考えが生まれ、自然にプロダクトに組み込まれていく。理解がなければただの作業になってしまう。人が理解をしてなにかに取り組んでいるのかどうかを知るにはその人を見ること。

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今年も世界のインターネット広告はとんでもない速さで変化をとげていて、(これは本当に、コロナ環境下でも多くの変化があった。対外的にみてもITP / ATTはもとより、GDPRとTCF回り、そして何よりブラウザがどんどんプライバシーを守りつつ安全なWebを実現するために多くの進化をしている。)Webについて考えを巡らせた一年でもあった。変化するときに新しい機会が生まれる。1インターネットユーザとして、そして事業者として、メディアが持続可能であり、ペインを減らし、広告という嫌われがちな位置づけのプロダクトが何を世に成せるのか?ということを今年も考え、実行した。Privacy Sandbox、Project Rearc、SkAdnetworkなど、次のディスプレイ広告の方向性を考える材料が多く出た。これを受け、自分たちは何ができるか。もっと大きな影響力と、推進力をもたなければ物事を変える力にはまだまだほど遠いなと思う一年でもあった。それと同時に、ユーザを守り、これを仕組み・仕様・そしてプロダクトを世に出していくという力の大きさを、IAB、Google、Apple、Facebookをはじめ、巨大なプレイヤーとプロダクトマネジメント、エンジニアリングチームから感じた。彼らの物事を変える力は本当にすごい。ユーザの便益を最優先に必ずしつつ、経済を設計し、複数事業者が連携可能なプロトコルを提案して仕様とする。お互いに競争関係にあるけれど、世界がよくなるように提案をして実装してローンチしてくる。自分自身同じ1年を過ごしているはずなのに、世の中に出しているアウトプットが全く違う。もちろん細かい部分をみれば質が低い部分はあるのだけれど、大きな方針でプロダクトをつくっていく力の強さというのを今年ほど感じた1年はなかった。

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もう少し個人としての振り返りを残す。年々答えのわかる問題をプロダクトとして解くことが上手くなってきた。また、答えのわからない問題(そもそもその問題がくるかどうかもわからないようなもの)を解くための仕込みの精度があがってきた。先んじてこういうデータを取っておいたからすぐに判断できる、先んじてこういう設定ができるようにしたから組み合わせてこの問題にも対処できる、といった具合である。それら自体は一機能であるが、要望に対するプロダクトの打率をあげられたのが今年の成果であった。こういう成果だ、というのは言いやすいのだが、なぜ今年はそれがうまくできたのか、というのは実は自分でもあまりちゃんと理解できていない。やはりプロダクトと事業を両方よくみていれば、次はこうしたらいいというのがでてくる。1つ1つの開発の合間に、この一手間をかけられる余裕と能力とオーナーシップがチームにあったからうまくいったのではないか、と思っている。来年はこうしたメンバーをまた増やしていきたい。

しかしまた、新たな問題を見つけて解かなければなとも思っている。広告はWeb技術と収益が直結し、技術も詰まった相変わらず面白い領域である。このモデルを他に転用し、新たな機会を創出できるというのを今年も幾度が話をした。需要と供給をプログラマブルに扱う(あるいはまだプログラマブルではない)市場が多くあり、広告に限らず値付けと落札がある。一言で言えばアドサーバ(動的な値付けと在庫予測、任意のリクエストをレポーティング、自由な入札方式、クリエイティブの制御可能性、オペレーション可能な要素の多さ)の転用である。RTBは事業者が同時に進化できる仕様をつくった。平たく言えば、値付け可能でないものを値付け可能にする、固定値付けのものを変動させる、値付けに競争関係を導入する、といった段階がある。ここ10年でこれらがタクシー、宿、フードデリバリー、不動産、証券、個人間取引、などで一気に進んできた。まだ見えてないものが値付けされ、取引され、競争による個人への便益への転換というのを繰り返すはずである。ダイナミックプライシングの事業者は多くあるが、制御のコアとなるアドサーバ部にはまだまだ多くのペインがある。こうした課題は多くの人にとって「まあそうだろう」という感のあることと思う。鳥瞰の目をもつこと。

最近はコードを書いたり機能設計をしていても、それがまるで広告ではないようにコードを書いている。まったく変な話だが、例えばこれが飛行機の値付けに使われていようが、北海道の畑で取れた玉ねぎの値付けにつかわれようが、スーパーの在庫管理でつかわれようが、まあ似たような課題があるのだろうなと勝手に考えながらコードを書いている。仕事では理由付けを問うが、自分が好き勝手に空想しながら楽しむのは自由である。昔からチラシやら本を読んで勝手に頭の中でシステム設計をするのが好きなのだが、大学のころに経済学の授業を受けてから需要と供給、あるいは値付けの妥当性について何を入出力にするのかを事業として考えるのが趣味となっている。事業のエンジニアリングをしていると、そうした大学のころに拾った物事について地に足をつけて考えられるようになってきたなと思いつつ、来年このメモを見返して考えの浅さに反省する、といった年になっていればいいなと思う。

2020/06/08

Webの仕組みをうまくつかう

ここ最近はクライアントルーティングで書くことが増えた。それにともなってWebアプリケーションの知見はブラウザ上に多く含まれるようになり、厚みが増した。

それまではデータモデリングからはじめ、パーマネントURLをつくり、サーバサイドルーティングをざっくり決め、画面要素を洗い出しつつ便利なツールを重ねていくという進め方をすることが多かった。今では画面要素でできる選択肢が多くあり、サーバサイドにDBを自前でつくらなくてもよくなり、APIも外部APIとの連携のなかでの1パーツとしての役割をうまく見出せばよくなった。工夫の勘所が変わり、UIに集中できるようになり、業務用件をUI主体で実現するスピードがすごくあがった。Webの仕組みでここまでユーザフレンドリーで、あらゆるシステムがWeb基盤の上で作れるなどと30年前には誰も考えられなかったのだろうか。

URLはクライアントサイドのための何かしらのKeyを構造化してもつ要素としての役割が多くなった。少なからず、アプリケーションの系の中において、そこに固有のデータが有るというURIあるいはパーマネントなURLとしての役割は薄れるときもある。

自らアプリケーションを設計するときに、URLの強力さをどう組み込むかというのはWebアプリケーションの設計を始めてからずっと無意識的に中心にあった。しかしながら、UIを作ることからWebアプリケーションに入門すると、決してURLからではなく、純粋に画面から入ってこれるということがわかったのだった。年々、Webアプリケーションを作り始める世代にとって、WebアプリケーションとはリッチなUIであり、画面がすべてリロードされることは稀であり、JSONはサーバを書かなくても飛んでくるものだという傾向が強くなっている。

立ち戻れば、Windowsアプリケーションやネイティブアプリなどと比べて、あえてWebでUIをつくることの大変さを感じることなく、この感覚が成り立つことはとても尊い。そして、せっかくWebブラウザで動くアプリケーションをつくるのだから、Webの力をもっと活かすといいのだという、なにやら逆説的な話をしていく頃合いなのだなあと日々の会話を通して思うのだった。

2020/05/18

比較できないつくりはどこかが間違っている

なにか独自なものを編み出したと思うとき、100回に99回は間違っている。

何か新しいプロダクトを作っていて、事業とシステム全体をおりまぜた全体像を計画しているときに、これは間違いないと肝を据えて取り組み始めようとする。システムをつくることは系を理解することなしにできない。システムを使うのとつくるのは、家に住むのと家につくるのの違いと同じだ。快適に水が扱えていても、その水がなぜ果たして安全に数十年も供給されるのかは知らなくて良い。

プロダクトは組み合わせで独自に見えてくる。ある面は別のプロダクトに似ており、ある面はまた別のプロダクトに似ている。それが幾重にもなり、すこし独自なものに見えてくる。些細な違いが圧倒的な価値観だと勘違いされ、ある面をしっかり組み上げることをおろそかにする。基本はすべての面において、完璧に既存のプロダクトを理解し、同等程度に組み上げなければ独自なものは生まれない。現代のプロダクト開発は全面戦争であり、全面的に素晴らしくなければ縮小し、淘汰される。

しかしこの勘違いはときとして爆発力になる。「もしかしたら自分はすごいものをつくっているのかもしれない」という自覚は、前に進む力になる。あるいは独自にみえるものを信じ、チームで向かっていかなければ新しい可能性を作れずに失敗する。学習最中の技術を使っているときに新しい可能性が見える体験をプログラマは多くする。この瞬間はいつも楽しい。巨大なシステムを作っているように思えても、実は小さな成功を積み重ねた結果だったりする。テストが通り、外部APIとの組み合わせがうまくいき、データが正しく保存される。小さなステップが面をつくり、質を上げる。

あるとき、ふと面を重ねていくと、なぜ自分たちがここまで作ってこれたのかわからなくなる。外から見れば直線上に進化してきたようにみえても、その過程はまがり道だらけだ。あなたの隣のあのサービスもきっとそうだ。結果として自分たちが立っているのがなぜなのかというのは、後にならないとわからないし、多くのことは後になってもわからない。コツは毎日いくつかの面を先駆者と比べることだ。向いている方向が違うならまだよく、方向が比較できなくなっていたら大抵うまくいかなくなっている。

2020/04/28

コロナと付き合う

もうWFHも2ヶ月が過ぎた。4月頭からは新卒も入ってきて、リモート体制で初めて新卒を迎え入れた。配属から10日ほどたって、各々タスクをこなすような状態になった。コロナ前に対面で話していた人が多かったのもあるが、人事や経営陣を含めてコミュニケーションを継続してくれていたおかげで業務にも受け入れることができた。また一つ順応できたことを嬉しく思う。

withコロナとなって、全てが初めてになった。これまでのプロセスは代わり、コミュニケーションから企画から実装までが全て変わった。オリンピックの延期が決まり、広告業界への波は今、そしてこれからも続いていくだろう。しかしながら足元での日々を支える事業、そしてエンジニアリングはwithコロナに慣れ、変化しながら着実に成果を出せるようになってきている。

コロナ環境下となり、すでにやり方を多く試みた。それまでもリモートでチームを働くことを調べ、そしてちょっとうらやましい気持ちもあった。GitLabのリモートでのDB復旧の生中継をみて、当たり前だと頭でわかっていてもできない環境を憂いたこともあった。今こうしてやってみれば、多くのことが回るようになってきた。この期間が続けば続くほど波は大きくなる。次は会社の本体、評価・会社の貢献度・愛着・文化、そうしたものが変容する時間になる。スコープがある程度定められた3ヶ月ほどのプロジェクトならうまく回ったものが、2年かけるような開発や、持続可能たる組織が今後どうなっていくか。そうした変化が見られる期間に入ってきている。

社会が同時に動くのを見ると、東日本大震災を彷彿とさせる。あのとき自分は何もできなかった。Netflixでみたビル・ゲイツのドキュメンタリーが思い出されれ、世界の困難を正面から解決しようとしている人たちの凄さを尊敬する。流通、生産、消費、人のからだの機能不全がその部位の働きを明確にするように、社会の機能の連動がこれほどまでに鮮明に感じられるのは今だからこそである。コロナを発端として、また新しい社会になっていくのだと、身を持って感じている。

2020/03/16

増やす仕事、減らす仕事

仕事には増やす仕事と減らす仕事がある。減らす仕事は時間とコストを節約し、余白をつくる。増やす仕事は新たな仕事を増やし、可能性を広げる。

増やす仕事は減らす仕事がなければ成り立たない。時間に空きがなければ考えられず、作れず、生み出せない。減らす仕事は余裕を作り、自動化し、効率を上げる。

増やす仕事は効果が指標になる。効果的でなければやめてよい。増やす仕事は実験的であり、不確実であり、今までにないことを試す。増やす仕事がなければ何もパイが大きくならない。減らす仕事は地味だ。できることは変わらない。今できていることを、もっと簡単にできるようにする。変化を簡単にする。

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一日の仕事を考えるとき、増やす仕事と減らす仕事の割合を考える癖が昔からある。いつからかは忘れてしまった。この仕事は価値を増やす仕事で、こっちは片付けの仕事だと考えていた。増やす仕事に費やす時間を増やさなければエンジニアとしての価値はないと思い、ひたすらにできることを増やした。

次第にシステムの面倒をみていくと、自他問わずつくった機能が期待しない動きになっていたり、変更がしづらくなってくる。溜まったデータも使いづらい。新しい機能を足すには複数箇所を直す必要がある。そうしたものを空いた時間で直す時間が次第に増えていく。既存のものを読み解き、理解し、再構築することはパズル的な興味深さがある。

自らの仕事を振り返るとき、増やす仕事と減らす仕事は2対8程度の割合になってきた。8割が準備である。8割は次の動きを早くするために時間を費やしている。コードを書くだけじゃなく、プロセスを変えたり、ルールを変えたり、やることを自体を減らしたりする。それによって明日の時間を捻出し、ようやく増やす時間にあてる。

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チームを構成する上で、増やす仕事と減らす仕事は個人のなかで回るとよいと考えている。自らの工夫が自らの時間を作り出し、新たな増やす仕事に当てられるようになる。そうすると信頼が集まり、より大きな増やす仕事に踏み出していける。個人個人の単位でこれが回るようになっていると、日々の洞察力があがっていく。

この状態になると、明日はこれを改善しておき、三日後には別部分に時間を投資できる、といった判断につながる。自分の時間を投資する判断を毎日することは、自分の効率を知ることだ。仕事をしていると言って作業をしているだけであるのと、自ら投資効率を考えて増減の何を制御してるのかを見ながら作業するのとでは効率の改善具合が変わってくる。

ここ1ヶ月弱のリモートワーク環境下においては特に、これが個々人で回り続けているかどうかで効率が特に大きく変わってしまっていると感じている。減らす仕事によって生み出された時間で、増やす仕事をするサイクルにはいれているかどうか。今日は何を減らし、何を増やせたか。自分でも改めて振り返る機会になっている。

2020/01/15

事業におけるソフトウェアエンジニアリング

最近自分のやっていることはなんなのだろうか?と思い返す機会が増えた。次のことをやっている。

* 広告に関連するWeb周辺技術の動向やらリサーチをしつつ
* アプリケーションが長期に渡って安定し拡張可能になるように設計するのを手伝いつつ
* サブシステムの分割がいい感じになるように相談にのりつつ
* 事業で中長期に渡って伸ばしたい領域を決めて技術的観点からコミットする

基本的には事業がうまくいけばよく、そのために採用やら面談やらチームづくりやらツール選定やらが紐付いてくる。働き始めて3,4年ごろはもうちょっと自分の市場価値を強く意識していて、あまり自分の価値を伸ばさなさそうな仕事には手を出すのをためらうふしがあった。今はそれよりも必要なことを必要な仕事としてやる、というスタンスになっている。

特定技術領域には当然弱くなっていくし、どれも深く入り込んでいくよりは他の代替手段を効果的に使っていくほうがレバレッジが効くことも増えた。中にはどうしても性能要件を超えるために細かなチューニングが必要になる場面も発生するが、案外単体のソフトウェア性能だけではなくて事業上の制約を変えることでこれを解決することもある。単体のソフトウェアで解決すべき課題はスコープを絞り、難易度をなるべく下げて解決可能な課題に落とし込む。そういった工夫のほうがうまく事業を回すためには効果的なことが多い。

ソフトウェア単体を堅牢に書く技術は年々ついてきた。これは単体テストを書こうとか、Observabilityを高めて複雑なシステムの故障に早く気付けるようにしようとか、技術的なアプローチに習熟している面もある。ソフトウェアにおける堅牢さとは読みやすさであると思う。読みやすさはTestabilityに繋がり、何が起こっているかをチームに理解させる力になる。読みやすいコードは自明であり、そのソフトウェアが何をすべきかをわかっていないと生まれない。リファクタリングが別の工程になるとうまく行かないのは 感覚的にも正しく、思考のループの中で洗練されたコードになる。これがチームで生み出せるとどんどんよい方向にソフトウェアが改善されていく。

事業におけるソフトウェアエンジニアリングとは細部でみれば上記のような観点があり、これらはすべてリスクコントロール手段である。良いソフトウェアがかけるならばトライが増やせる。トライをする意思決定がしやすくなる。ソフトウェア、あるいはWebサービスが長期に渡って動くために、CI/CD・Testability・Observabilityへの投資は常に効果的で、高速に変更を重ねる文化はすでにできている。チームのScaleを確保するのはいつでも難しいが、同じ人数でもスループットが増えていくのは自分たちもまたソフトウェアの力によって加速が可能な構成になっているからである。

日々の仕事がリスクコントロールであることは、ソフトウェアに限らない。すべての仕事は決めることを決めることだ。それが当たり前になってしまっていて、なかなか言葉にするのは難しい。

2020/01/06

2020年に読んだ本

2020年に読んだ本をまとめておく。随時更新。

2019年
2018年
2017年

最終更新 2020/08/13

小説

失われた地平線 (河出文庫) (日本語) 文庫 – 2020/1/8 James Hilton (原著), ジェイムズ ヒルトン (著), 池 央耿 (翻訳)
* アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K・ディック (著), 浅倉 久志 (著), カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン) (イラスト), 浅倉久志 (翻訳)

技術書

* Clean Agile 基本に立ち戻れ (アスキードワンゴ) Kindle版
* DNSがよくわかる教科書 Kindle版
株式会社日本レジストリサービス(JPRS) (著), 渡邉 結衣 (著), 佐藤 新太 (著), 藤原 和典 (著), 森下 泰宏  (監修)  形式: Kindle版
* DMM.comを支えるデータ駆動戦略 Kindle版 石垣 雅人  (著), 松本 勇気 (監修)  形式: Kindle版
* AWSではじめるデータレイク: クラウドによる統合型データリポジトリ構築入門 (日本語) 単行本 – 2020/7/9 上原 誠  (著), 志村 誠  (著), 下佐粉 昭  (著), 関山 宜孝  (著)


その他

* 5Gワールドへようこそ! Kindle版 日経 xTECH  (編集)
考える旅人 世界のホテルをめぐって (わたしの旅ブックス) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/5/22 山口 由美 (著)
最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―(新潮文庫) Kindle版 二宮敦人  (著)
* その仕事、全部やめてみよう――1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」 Kindle版 小野 和俊  (著)
140字の戦争 SNSが戦場を変えた Kindle版 デイヴィッド パトリカラコス (著), 江口 泰子 (翻訳) 
* 僕は君たちに武器を配りたい Kindle版 瀧本哲史  (著) 
* 対話型マネジャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術 Kindle版 世古詞一  (著) 
* ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング Kindle版 小島英揮  (著)
* 取締役会の仕事 先頭に立つとき、協力するとき、沈黙すべきとき Kindle版 ラム チャラン;デニス ケアリー;マイケル ユシーム (著), 川添 節子 (翻訳) 
* Who You Are(フーユーアー)君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる Kindle版 ベン・ホロウィッツ (著), 浅枝 大志 (翻訳), & 1 その他 
* 良い戦略、悪い戦略 (日本経済新聞出版) Kindle版 リチャード・P・ルメルト (著), 村井章子 (翻訳)
* ブリッツスケーリング Kindle版 リード・ホフマン (著), クリス・イェ (著), & 2 その他 
* 世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由 Kindle版 荒木 博行  (著)
* 「デジ単」デジタルマーケティングの単語帳 イメージでつかむ重要ワード365 Kindle版 村山 亮太  (著), 糸乘 健太郎 (イラスト)
* みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」 Kindle版日経コンピュータ (著), 山端 宏実 (著), 岡部 一詩 (著), 中田 敦 (著), 大和田 尚孝  (著), 谷島 宣之 (著) 
* NEXT GENERATION GOVERNMENT 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方 (日本経済新聞出版) Kindle版 若林恵 (編集) 
* いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (早川書房) Kindle版 センディル ムッライナタン  (著), エルダー シャフィール (著), 大田 直子 (翻訳)  形式: Kindle版
* 僕らはそれに抵抗できない Kindle版 アダム・オルター (著), 上原 裕美子 (翻訳)  形式: Kindle版
* 経営理念の教科書 勝ち残る会社創りのための最強のツール 新将命  (著) 
文章のみがき方 (岩波新書) (日本語) 新書 – 2007/10/19 辰濃 和男  (著)