迷子になった五歳の孤児・飛鳥は親切な青年に救われる。二年後、引き取られた家での虐めに耐えかね逃げ出した飛鳥に手を伸べ、手元に引き取ったのも、かの青年・滝杷祐也だった。飛鳥の頑なな心は、祐也や周囲の人々との交流を経て徐々に変化してゆくが…。ある毒殺事件を巡り交錯する人々の思いと、孤独な少女と青年の心の葛藤を、雪の結晶の如き繊細な筆致で描く著者の代表作。
「BOOK」データベースより https://www.amazon.co.jp/dp/4488467040本屋でふと手に取った一冊。普段読まないタイプの作品だった。推理小説というラベル付けがあるとどうしてもそのトリックが気になってしまいがちになってしまうことを反省した。最初の100ページですっと引き込まれていった。飛鳥が成長していく様子、心の変遷、内面のやりとり。一つ一つの言葉遣いや情景描写が飛鳥や裕也のそのときどきのあり方を鮮明に伝えてくる。
でてくる場面は少ないし、人物も多くはない。全体を通してドラマを感じるのは、やはり時間経過に伴う飛鳥の変化だろう。そして雪と詩がところどころで色とリズムを加えていく。大変美しく、切ない物語だった。