2021/06/28

1の時間で10をやる

ありがたいことに1つの事業領域に集中して取り組む時間をここ数年もらえている。デジタルマーケティングの領域においては外部環境の変化も毎年のようにあるけれど、変化を脅威とも機会とも受けながらプロダクトを改善しながら走り続けている。どこまでいってもプロダクトの改善というのは武器であり、顧客に価値を届け続けるために必要なことだというのは常に変わらない。

しかし最近、どうにもこうにも時間が足りなくなっている。これまでは打ち合わせやら考え事やらのあいた時間にがががっとAPIなり画面なりを作るという余白があったのだけど、かなり意識して3時間をおさえる、というようにしないと手を動かす時間がない。事業に関することでいうと、ざっくり次のことをやっている。

  • 採用
  • 評価
  • 組織
  • プロダクト

これらは4つとも関連している。たとえばリサーチ。将来投じるべき技術領域だと考えられるものをキャッチアップし、実際にやってみる。技術じゃなくても情報やモノであることもある。とにかく調べて、それをプロダクトにフィードバックすることを考えている。投資したい技術領域についてはチームを作ったり、あるいはそれにそぐう人をいれてみたり、社内に広めたり、といったことをしていく。その流れにそって採用も進む。組織をなめらかに、かつ強化するために評価があり、これは制度としての設計というより事業としてどうつかっていくか、ということを日々変えていっている。

プロダクトにおける先見性があるものをできているか?というとわからない。ありがたいことに様々な媒体の方々からいろんな要望をいただき、デバイス、国、様々な文化慣習を読み取りながら進めていっている。広告 + インターネットの領域というのはとりわけ多くのお金と知見が飛び交う傾向があり、毎月のように新しい取り組みがでては消えていく。ただ、大きい螺旋を描きながら改善していくのもこの世界の動きであり、それが例えば今はデータとプライバシーに関して起きている。ITPに始まり、3rd party cookieの廃止、ATT、SkAdnetworkやPCM、Privacy SandboxにTCFにCMP。新しい水準、全く新しい仕組み、いままで当たり前だったものが当たり前じゃなくなる。こういうことがどんどん起きていく。

会社として当たり前にやっているように思われることも、先んじて手を打っていることとそうじゃないことでの区別がようやくつくようになってきた。ファーストペンギン、セカンドペンギンという言葉もあるように、だれかの様子をみてからすぐ動く人もいれば、誰よりもはやく施策をうって高速に試験して次の手をうつ人たちもいる。セカンドペンギンは賢いと思っていたが、世界はもっとも巨人であろう人たちがもっとも最初に飛び込んでいく、というように見える時がある。実際に巨大なファーストペンギンがいる場合もあるし、自分たちの見えていない動向もまたそこにあったりする。世界は同時多発的に動いている。日本の動向は世界の余波を都合よく受けていく傾向がある。

良し悪しではないのだが、やっぱり日本については強くこうする、という意図、というより意志が優先されていかない。難しいが個人の意識が低い問題について、あるいは各々が考えてこうした世界を作ろうというものよりも、なにか大きな流れに巻かれていき、真っ当だと思われさせられている、という側面を見ることが増えてしまった気がしている。ただ、やり始めると早い。そういうことを仕事でもよく感じるようになってきた。ただこれもうまくいえないのだが、セカンドペンギンならぬサードペンギンくらいの位置で安心感をもって動かしていく、というのが得意なのだな、自分も含めて、と思う時がある。


などなどぐるぐると書いてみたが、ようするに考えを掘り進めて「何をすべきか?」を考えるというのはこのように時間が溶けていく。日々経営陣でも社内のことから社外のことまで幅広く話していると思っているのだが、一歩踏み出せば自分の頭で考えたようで、実はまったく考えていなかったな、ということが毎日のようにある。そういうことをしていると、これまで10の時間で満足にできていたことが5の時間でなんとか終わらせなければならなくなったり、あるいは1の時間で誰かにやってもらうための仕掛けが必要になっていく。

仕掛けをつくって時間を生み出せたら、その頃にはまた別のことをやりたくなっていてすでに動き始めている。そうこうしているうちにまた10の時間は1の時間になり、さらにさらに歩みを進めている。自分でもどこからどうきてこうなったのかよくわからないが、気付いたらいろいろなことが進んでいて、地形が変わっている。そういう感覚が最近強い。

ただ1つ言えるのは、自分から変えないことには自分の変えたいことは変わっていかない、ということだ。だから毎日、何かしらこうしたらよいとぶつくさ言いながらも、なんだかんだ集中して仕事をしているのだな、と振り返った。