2022/03/22

「超一流になるのは才能か努力か?」を再読した

前にも小賀さんがなにかで紹介されていたのを見て読んでいたのだけど、先週の技育祭2022春の登壇に向けて再読した。改めてメモしたことをまとめておく。

先週の発表資料はこちらからどうぞ。学生エンジニアに向けて。
https://speakerdeck.com/carta_engineering/geek-sai-2022-spring

本書のなかでは絶対音感をトレーニングによって身につけることを例示しつつ、コンフォートゾーンを抜け出す「限界的練習」の概念、苦しい練習を続けるテクニックなどについてストーリー仕立てで紹介されていく。

なによりこの本はコンフォートゾーンを抜け出す方法についてわかりやすく説明してくれているのがよい。「目的のある練習」をやろう、というのが趣旨である。

目的のある練習のための4つのポイントは端的である。

  • はっきりと定義された具体的目標がある
  • 集中して行う
  • フィードバックが不可欠
  • コンフォートゾーンから飛び出すことが必要
自分自身の経験からもこれはわかりやすい。クラシックギターの練習を大学4年間続けていたが、基礎的なスケールのスピード・譜面の読み方・フォームを覚えるとあとは自由に曲を弾いて楽しむといった具合になりがちである。その後尾尻先生に習い始めてからはフォームを直し、自分の耳で自分の演奏を聴き直し(あるいはこの音が聴けてないね、というフィードバックをもらい)、徐々に演奏の幅も広がっていった。アンサンブルに参加すると他の奏者や指揮者の方々が自分の耳を広げてくれた。短時間に時間を共有して、ある演奏会や達成目標に向けて練習していくと、やはり能力は順調に伸びていく。そういったことを実感した。

プログラミングを始め、自分にかけている負荷というものについては甘くなりやすい。どうしても自分ができる幅の問題を問いてしまう。「自らのコンフォートゾーンから飛び出すというのは、それまでにできなかったことに挑戦するという意味だ。」とのとおり、コンフォートゾーンから自分はいま飛び出しているのか?というのは前にこの本を読んだときから定点観測していることだ。

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しかしそれにしても目隠しチェスチャンピオンの事例などは凄まじい。どうしてここまで駒のパターンを覚えられるのか。それは「心的イメージ」によるものだ、と書かれている。つまり、ランダムに配置した駒を覚えられるというわけではなく、意味ある配置をとらえる力が強いのである。

心的イメージについてはこう記述されている。

心的イメージとは、脳が今考えているモノ、概念、一連の情報など具体的あるいは抽象的な対象に対応する心的構造のことである。

たとえば言葉も心的イメージである。「犬」の例が紹介されており、「犬」といわれれば一瞬で自分のあたまのなかにかわいいワンちゃん、あるいは番犬になりそうなたくましくてかっこいい犬・・・などが思い浮かぶ。限界的練習とは、その活動に役立つ心的イメージをつくりあげることにほかならない、という。

本を通じて語られていることは、練習しなければ能力は身につかない、ということだ。とにかく集中して練習をしている。そして「意志の力が強い人」など存在しない、と著者は主張しており(少なくともそれについて科学的に正しいと証明されていないとのこと)、ただただ「意欲を生み出す要因はなにか」と向き合うよう促している。うまくなって能力が上がること自体が意欲の根源になる人、自分は成功すると信じる気持ち・・人によって異なるが、なにかが自分の意欲を高めている。これと向き合うことで、限界的練習を続けることができる。

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ちなみに似た領域に「RANGE」という本がある。こちらでは英才教育と「幅」を広げることについて比較した話が展開されていく。どうしても超一流というと英才教育のイメージが強くなりがちだが、また違う観点から触れたい方はこちらもおすすめ。